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とある強化系の魔法使い そのよん

 
咸掛法、というものがある。
魔力と気を混ぜ合わせて凄まじい力を得る、というものだ。
 
そこで、問題が生じる。
シュウ=カタギリには、魔力も気も備わっていないのだ。
 
 
それでは何故、彼が魔法を使えるのかと言えば、『念』による力押しと言うしかない。
念能力によって、摂理を捻じ曲げるという力技。
魔力や気をオーラで代行しているからこそ、それでもなんとかなっている。
 
 
先日、魔法の射手と障壁を合成するなどという前代未聞(そもそも彼の周りに魔法を使える人が居ないが)
のことをしでかし、彼――シュウ=カタギリもちょっぴり反省していた。
あくまでもちょっぴり。
 
ノリだけで適当なことをするもんじゃないなぁ、ぐらいの反省であり、そこに後悔は見られない。
それどころか、失敗の中で手応えを感じたようで、専用の術式を組んでもう一度やろうなどと考えている。
 
 
断言しよう。シュウ=カタギリは大馬鹿者である。
 
 
 
 
 
「という訳で、ハンター試験を受けたいので許可を下さい」
 
「「…………」」
 
 
彼の両親――リョウ=カタギリとミオ=カタギリは、なんというかどうしようもない感覚に苛まれていた。
原因ははっきりしている。目の前の二人の間に生まれた子供である。
 
最近、色々と問題を起こして、この町の居心地が微妙に悪くなっているのは知っている。
でも、それがハンターになることと、どういう方程式で以って等号で結ばれたのかが理解出来ない。
しかも、彼はアキナ=ヤマムラと一緒に、と言っている。向こうの親にも話を通さなければならない。
 
確かに、二人は『この子もそろそろ親離れの時期かな』と考えていなかった訳ではないが……
確かに、二人は息子の将来の選択肢から、ハンターという職を取り除いた覚えは無かったが……
確かに、二人はイチャラブするのに、息子の目が気になるなと考えたことが無い訳では無かったが……
 
しかし、それとこれとは問題が違う。
 
 
まだ彼は13歳なのである。
心の強さには驚くべきものがあるが、それは彼の精神構造が常人とは違うからである。
 
その彼が、女の子に一緒に仕事の面接(微妙に違う)を受けに行くときた。
そりゃ驚くだろう、驚きますよね、驚くよの三段活用である。
 
 
――リョウ=カタギリとミオ=カタギリの驚きは、その日天井上がりで止まることを知らなかった。
主に、アキナ=ヤマムラの母、ユイ=ヤマムラのノリの軽さによって。
 
 
『息子が、お宅の娘さんと一緒にハンター試験を受けたいと言ってるんですが……』
 
『良いですよー』
 
『そうですよね。心配ですよね。……え?』
 
 
具体的には、こんな感じである。
それでいいのか、ユイ=ヤマムラ。
 
 
 
 
かくして、シュウ=カタギリ及びアキナ=ヤマムラの両名は、ハンター試験へと赴くこととなった。
確かに厄介払いという面も少なからずあっただろうが、彼らは両親に愛されていた……はずである。
 
 
 
 
 
 
「試験会場はザバン市だっけ?」
 
「そうよ。ここからざっと40キロ」
 
「うーん。そのぐらいの距離だとバスを待つのも……走ろっか」
 
 
周りの人間は、一斉に『いや、おかしいだろ』と心の中で突っ込んだ。
『走ろうか』が本気なら、“40”キロではなく“4”キロが正しいのでは……と考えるのが普通の人間だ。
フルマラソンくらいの距離を12、3歳の少年少女が『走る』というのは、普通に考えておかしい。
 
 
――そう、『普通』ならば。
 
 
『普通』に縛られているようでは、ハンター試験に合格することは難しい。
『普通』の領域ではどうしようもないような化け物と戦うようなこともある職業……それがハンターなのだから。
 
 
「そうと決まったらさっさと行くわよ。ほら、よーいドン!」
 
「うわ、何それ卑怯!」
 
「こういうのは言ったもの勝ちなのよー!」
 
 
ドップラー効果がかかった声を残して走り去った二人を見て、そのバス停に並んでいた人間は声を揃えて叫んだ。
 
 
『本当に人間かっ!?』
 
 
 
 
 
 
シュウ=カタギリがハンター試験を受けることを明かした時、心源流の師範代は複雑な顔をした。
具体的には……
 
『こいつの面倒もう見なくて良いとかヒャッホウ!』とか
『教え子が巣立っていくのは嬉しいことだな、うん』とか
『女同伴で試験受けるとかハンター舐めてんのか』とか
『ちくしょう俺にはまだ彼女居ないのに』とか
『一度痛い目見てくれば良いんだ』とか
 
そんな、複雑な感情を持ちながら、師範代は彼を送り出した。
案内人――ナビゲーターの連絡先を渡して。
 
 
「本当に……ここなの?」
 
「仮にもオイラはナビゲーターです。信頼はしなくていいですが、信用はして欲しいですね」
 
「まぁまぁ、ここは任せておこうよ。間違っていたら、それはその時だよ」
 
 
『めしどころ ごはん』
そんな看板が掲げられている店の前に、三人の人間が立っている。
 
一人目は黒髪の少年。彼――シュウ=カタギリである。
二人目は黒髪の美少女(自称)であるアキナ=ヤマムラ。
三人目は茶髪の案内人。フォルマ。
 
フォルマと名乗る彼の風貌は、田舎の少年という言葉がぴったりだ。
風が当たっても殆どなびかない短さの茶髪。
その顔は全体的に丸っこく、目鼻も優しげにタレている。
上は白い袖なしのシャツ。そして下は緑色の半ズボン。
もし、虫取り網を背中に背負っていたら、完璧だっただろう。
 
 
「さて、それじゃさっさと入っちまいましょうか」
 
「そうね。ここで口論しているよりは有意義だわ」
 
「……フォルマに何か、あるの? アキナ」
 
 
妙にアキナが突っかかることに、シュウが疑問を投げかける。
その疑問への返答は、少女という肩書きには似合わない迫力のジト目だった。
そのジト目に、彼は居心地が悪そうにそっぽを向く。
 
 
「夫婦漫才やってないで入りましょう。受け付けが終わっちまってても知りませんよ」
 
「……そうね。こいつの空気の読めなさなんて、今更言及することでもないし」
 
「そんなに僕、空気読めないかなぁ……」
 
 
声をかけても終わらない掛け合いに、フォルマは一つ溜め息を吐いて諦めた。
もう放って先に行こう。そう心に決めて、ドアを潜った。
 
その姿を見て、慌ててシュウが追いかける。
渋々といった様子で、アキナもその背中を追う。
 
 
「ステーキ定食を二つ」
 
 
その言葉にぴくりと、店主が反応する。
そして、じろりと視線を三人へと向ける。
 
 
「焼き方は?」
 
「弱火でじっくり」
 
 
その言葉に反応して、店全体が動き出す。
ウェイトレスが三人を先導する。
 
 
「お客さん、奥の部屋へどうぞー」
 
 
言われるがまま、二人は足を進める。
部屋に入ると、中心にまず見えたのはじゅうじゅうとおいしそうな音を立てる肉。
 
 
「来年は会わないことを祈ってるぜ」
 
 
フォルマの声に、慌ててシュウが振り返ると、ちょうどドアが閉まったところだった。
その間に「おなかすいたー」と呟いて、アキナは食事を始めている。
 
 
「……アキナって、食いしん坊キャラだったっけ……?」
 
「気にしないで食べなさい。腹が減っては戦は出来ぬ、よ」
 
 
むーん、と一しきり唸ってから、シュウも肉へと手をつけた。
うぃーんという音と共に、部屋全体が下降していく……エレベーターのような感覚を、シュウとアキナは感じ取る。
食べている場合ではないのでは、というシュウの考えに反して下降は止まらない。
結局、シュウもアキナと同じように部屋が停止するまで黙々と食べ続けた。
 
 
 
 
 
 
食べ終わり、二人が雑談を交わし始めた頃になって、ようやく部屋の動きが止まり、ドアが開いた。
見えるのは、人人人――随分と大勢の人間が、ハンター試験を受けるようだ。
 
 
「登録番号です。無くさないで下さいね」
 
「え、はい」
 
 
にゅ、とシュウの横合いから、丸いプレートが差し出された。
そこには『379』と書かれている。
プレートを差し出してきた人物は誰か、とシュウが振り返るが、そこに人影は見えない。
『念』かもしれない、と自己完結して、シュウはアキナの方に振り返った。
 
 
「そこのお嬢ちゃん、ルーキあべしっ!?」
 
 
つい、アキナに声をかけていた中年の男を殴り飛ばしてしまった。
ごろごろと地面を転がっていき、その男は動かなくなった。
 
 
「ちょっと、シュウ。何してるのよ」
 
「いや、なんか下心を感じて」
 
 
その男が、ルーキー潰しのトンパと呼ばれる男であることを、彼らは知らない。
そして、そのパンチ一発で、44番のプレートをつけたピエロのような男の関心を惹いてしまったことも。
 
彼らは知らない。
 
 
 
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junq

Author:junq
愉悦(´・ω・`)


好きな作家は、奈須きのこと西尾維新。
最近は成田良悟も。

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