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とある噂の取捨選択 そのに

 
実に面倒臭そうに、『取捨選択』と呼ばれる彼は携帯の画面を見ていた。
風紀委員活動177支部の人間が彼について調べている、という情報がそこには表示されていた。
 
 
「……ふむ。先日の事件で目を付けられたか」
 
 
他に仕事は無いのか、と呟いて彼は携帯をポケットに押し込んだ。
 
取捨選択の携帯には、彼が独自に構築したプログラムが入っている。
彼自身のことについて調べる端末を自動的に検索するプログラム。
そして、自宅のパソコンなどに自動的にバックアップを残すプログラム。
主なものはこの二つだ。
 
前者については、なるべく自身についての情報を制御する為。
後者については、携帯を使い捨てる為である。
学園都市から豊富な奨学金を受け取る彼にとって、携帯電話は消耗品でしかない。
……もっとも彼の携帯はどちらかというとスマートフォンだから、『携帯電話』という区切りに入るのかは疑問だ。
 
上から下まで黒尽くめの彼は、眠そうな顔を更に歪めて大きな欠伸をした。
そう、まるで今も日常を過ごしているかのように。
 
 
「それで、死ぬ準備は出来たのかよ超能力者レベル5
 
「……ふむ。そうか。囲まれていたのだったな」
 
 
のんびりとした彼の声を聞いて、彼を取り囲むスキルアウトの面々が殺気立つ。
全員が拳銃などの飛び道具ではなく、鉄パイプや木刀を持っているのは、恐らく同士討ちを防ぐ狙いだろう。
 
彼は8人しか居ない超能力者レベル5の一人、ということで有名だが、もう一つの異名でも有名だ。
 
 
――『接触不能ゴースト
 
 
有名な都市伝説から辿れば、さほどの労力をかけること無く、超能力者レベル5の一人だと分かる。
超能力者を倒して名前に箔を付けたいと思う輩は意外と多い。
そして、彼は遠距離攻撃をしない。全くと言って良いほど。
その一点で、彼は無能力者にとって、倒しやすいと思われている。
 
そういう輩を適度に誘き寄せ、潰す。
それが、彼のライフワークだ。
 
 
「こっの、野郎!」
 
 
一人が血気に逸って飛び掛ると同時に、全員が輪の中心に殺到する。
ほぼ同時に振り下ろされた凶器の群れに、突破出来るような隙間は無い。
だが、それがどうした・・・・・・・
 
ガン!と鈍い音を立て、凶器が次々に地面に激突する。
それを向けられた本人は、至って自然体。
逆に、振り下ろした側は、決して自然体では居られない。
やっと理解したのだ。何をどう小細工しても、その刃は届かないと。
 
全ての凶器は抵抗無く、それでいて彼の体に傷一つ作らずにすり抜けて、地面に激突していた。
中心に立つこの場の絶対者は静かに喋り始める。
 
 
「ふむ。私の二つの異名の意味を理解していなかったようだな。まぁ・・今更だが・・・・
 
 
次の瞬間、狭まって狭まって、もはや密集していた輪が、一欠片も残さず吹き飛んだ。
中心の彼は、まるで今誰かを殴り飛ばしたような格好で静止している。
それもそのはず、彼は今殴り飛ばしたのだ。周りに居たスキルアウト全員を。
 
 
「てめぇ……能力、一体何なんだよ……」
 
「能力使わずに……拳で、だと……」
 
 
スキルアウト達が呻き出すが、立ち上がる者は一人も居ない。
先の彼の攻撃は、無力化を重視したものだったからだ。
そう、ただ単純なる心臓殴打ハートブレイクショット
 
 
「ふむ。別に能力を使わなかった訳ではないのだが」
 
 
むう、と唸りながら彼は腕を組み、考えを巡らせた。
どう説明するのが、一番分かり安いだろうか?
それを数秒の間考えて、彼が出した結論は――
 
 
「ふむ。面倒だ。帰るか」
 
『説明しろよっ!?』
 
 
スキルアウトの面々の声が重なった。
まぁ、勝者が敗者の言うことを聞く道理も無く、彼はいつも通りゆらりゆらりと路地裏から出て行った。
 
 
 
 
 
 
能力によって傷つけられないことを最優先とした、継ぎ目無く、金属光沢を放つ壁。
個人の部屋以外の空間ではAIMジャマーなどの対能力者用の設備により、能力の行使は困難。
全五基あるエレベーターは縦×横の二次元的な動きで、乗っている者を直接部屋まで運ぶ。
それ故に、個人がどこに住んでいるか、全てを把握しているのは管理人のみ。
 
そんなVIP用のマンションに、『取捨選択』と呼ばれる彼は入っていく。
普通の学生ならば雰囲気だけで気圧されそうな、大理石や金で飾り付けられた玄関をゆらりゆらりと歩いていく。
そして、エレベーター脇に設置された各種認証装置に、いつものことであるかのように無造作に手を伸ばす。
 
エレベーターに入ると、そこには電卓のように数字が並べてあるだけで、例えば『1F』などのボタンは存在しない。
そのボタンを、やはり彼はいつものようにポチポチと押していく。
最後に、彼が一枚のカードを数字盤の横のスリットに通すと、ようやくエレベーターは動き始めた。
 
やがて、エレベーターが止まり、部屋の入り口に当たるドアが現れる。
彼はドアのノブに当たる部分に取り付けられた機械のスリットに、カードを通す。
機械のランプが赤から緑に変わったことを確認し、彼はドアを開いた。
 
 
「お帰りなさいませ。ご主じ」
 
 
そして、即座に閉めた。
ピー、という音と共に、機械のランプが再び赤に変わる。
彼は少し体を仰け反らせて、部屋を間違えていないか確認。
……そして、先程とは違って目に気だるさを見せながら動作を繰り返し、ドアを再び開いた。
 
 
「……先程のは、どういうつもりだ? 雀」
 
「メイドを雇っている実感が沸くんじゃないかなー、と。ふと思ったのですよ」
 
 
そう、うそぶくのは、茶髪を肩のところで揃えた少女。
その釣り上がった糸目は、何故か優しい印象を与える。
 
そして、その頭にはメイドカチューシャ!
そして、その体にはメイド服!
 
その姿を、ある人が見たならこう言うだろう。
 
 
――まさにメイド。
 
 
そんな少女……雲雀ひばりすずめを目の前にして、取捨選択の返答は簡潔だ。
 
 
「ふむ。脳に蛆でも涌いたか」
 
「いきなり酷いのですよ、と」
 
 
そう言いながら、雀はスカートを翻す。
足音を立てず、スルスルと奥へ歩いていく。
その後ろを追うように、取捨選択も奥へ向かう。
 
やがて二人は、一つの部屋の前で止まった。
 
 
「モンスターのグラフィック全54体。終わったことを報告します、と」
 
「ふむ……迷宮ダンジョン計画プロジェクトの完成の日は近いな」
 
 
雀がセキュリティ用の認証機器にパスワードを打ち込む。
ピーという電子音と共に、ゆっくり扉が開いた。
その部屋にあるのは、ただひたすらに並列接続されたコンピュータ郡。
その演算速度は、外の世界のスーパーコンピュータの約3倍。
彼の所有物の中で、一番高価なものがこれだ。
 
そのコンピュータ郡の前に置かれたいくつかのスクリーンのうち、一つの前に彼は座り込んだ。
軽快にキーボードを叩き、彼は一番近くにあった棒状の記録媒体にデータを保存する。
そして、おもむろにその記録媒体に指を突きこんだ・・・・・
そんなことをすれば、普通データは壊れるはずだが、画面上のそのデータは次々に更新されていく。
あたかも、今もデータの改変が行われているかのように。
 
 
「相も変わらず、理解出来ない操作ですね、と」
 
「……まぁ、自覚はしている」
 
 
彼らが製作しているのは、いわゆるダンジョン運営ゲーム。
プレイヤーは、神の視点からモンスターに命令を下し、ダンジョンを作らせる、というもの。
彼らの作るゲームの特徴は、それこそ何をしても良い・・・・・・・ということ。
 
ダンジョンを閉鎖し、中で延々とダンジョン作りをしても良い。
深奥に美しい宝石を配置し、誘き寄せられる冒険者をなぶり殺しても良い。
迷宮核ダンジョン・コアをさらけ出し、侵入者と緊張感ある勝負をしても良い。
18歳以上なら、冒険者達を性行為に浸らせることさえ、出来る。
 
――もっとも最後はきっちりと年齢制限がかかっているが。
 
 
「ふむふむ。やはり、仕様をあらかじめ決めておくと、楽で良い」
 
「前は締め切りがあったから、最後はデスマーチでしたね、と」
 
 
前、というのは、ありきたりのRPGゲームの製作を依頼された時のことだ。
本来、RPGというのは、ストーリーからグラフィックから味方から敵から……とにかく凄まじい量のデータを用意する必要がある。
そんなゲームをたった二人で? 普通ならさじを投げたくなる。
結局、この二人も、最終的にはデスマーチと呼ばれる連続徹夜の製作で、なんとか乗り切ったのだ。
 
比べて、今回のゲームはどうだろうか。
ストーリー? 元々無い。
味方? 既にデータは完成済み。
敵? 自動生成である。
 
更に言うならば、有料で販売はするものの、趣味で作っている為に、締め切りすら無い。
締め切りが無い。なんて素晴らしい響きだろうか。
 
 
「既に、夕食の準備は完了していることを報告します、と」
 
「ふむ。ご苦労。あと十分でリビングに向かう」
 
「かしこまりました、と」
 
 
足跡を立てず、スルスルと雀は部屋を出てゆく。
残されたのは、作業を続ける取捨選択。
 
 
「……ふむ。どの程度のスペックのパソコンに合わせれば良いか……」
 
 
取捨選択は悩む。
ここのコンピュータは、ハッキング防止の為に、ネットに繋いでいないのだ。
パソコンの標準規格さえ、部屋の外に出なければ分からない。
 
 
「……ふむ。そうだな。3つほど、別のモードを作るか」
 
 
具体的には、低スペックパソコン用とか。
ハードにパソコンを選ぶと、どうしてもそこら辺が厄介なのである。
一つのパソコンを大量生産するようなことが、需要を考えると出来ない。
例えば、ゲームハードのように、ゲームを動かすことを考えた性能にすると、どうしても値段が高くなる。
あちらを立てれば、こちらが立たずなのである。
 
といっても、逆にパソコンさえあれば、辛うじてだろうと動かすことが出来る為に、市場が大きいというのはメリットだが。
専用のハードが無ければ、全く動かないような一般的なビデオゲームには無いメリットだ。
 
 
「……もうすぐ、十分か。ふむ。行くか」
 
 
記録媒体から指を引き抜き、そしてデータの確認。
作業を終えた取捨選択は、リビングで待つ雀の元に、ゆらりゆらりと歩いていく。
 
 
 
 
 
 
 
「うーん。白井さんが遭遇した人というのは……恐らく、この人ですよ」
 
接触不能ゴースト? ……初春。私は都市伝説を調べている訳ではなくてよ」
 
 
風紀委員活動第177支部。
その中で、二人の少女が調べものをしていた。
頭に花の冠を乗せた格好の、初春飾利。
茶髪をツインテールに纏めている、白井黒子。
 
 
「上から下まで黒尽くめの、中性的な男性。ドロップキックがすり抜けた……でしたよね?」
 
「ええ。その通りですの。女生徒が事情を把握していなかった以上、あの方から聞くしか……」
 
「だから、それは全て接触不能の特徴なんですよ。更に深く調べたところ……超能力者の第三位らしいです」
 
「つ、つまり、お姉さまより上……?」
 
 
第四位。超電磁砲レールガンの御坂美琴。
電気を操るという、単純明快な能力の持ち主にして、学園都市の頂点である超能力者レベル5
努力でその位置まで上り詰めたという噂から、無能力者レベル0にとっては憧れだ。
 
 
「どんな能力なのかは、分かりませんか? 初春」
 
「ただ触れないってだけですねー。体内にテレポートしても効かないかもしれません」
 
「攻撃は無意味……ということですわね」
 
 
先のスキルアウトによる、女生徒を狙った事件。
取捨選択に白井黒子が気を取られているうちに、スキルアウト達は意識を取り戻し、逃走。
結果、女生徒から事情を聞くことになったのだが、女生徒は途中で意識を失った為に、記憶が曖昧だった。
その為、白井黒子は取捨選択から話を聞こうと試みたのだが……情報が無く、失敗。
 
最終的に行き着いた先が、初春飾利に頼みこんでの情報収集だった。
 
 
「ただ、取捨選択という異名からすると、彼は何に触れないか選ぶことが出来るのでしょうね」
 
「触られないことを選ぶ……一般的な能力では、有り得ないですわね」
 
 
そう。異名の意味を読むことで、彼の能力は大まかながら分かる。
それでも、対抗手段を発見できる、という訳ではない。
物理的な現象を起こす能力者の内、9割は彼と相性が悪い。
残りの1割でさえも、勝つ目はあるだろうが、相性が良い訳でもない。
 
 
「せめて、その取捨選択さんが良く居る学区は、分かりませんの?」
 
「んー、結構あちらこちらに出没してるようですからね。……目撃例も、他の都市伝説と比べると多いですし」
 
 
多すぎるが故に、その中の重要な一つには辿り着けない。
それこそが、取捨選択の狙いである。
 
そして、その一つを突き止めようとすれば、彼の感知網に引っ掛かる。
彼の組んだプログラムは、やたらと高性能だ。
それこそ、まともな作り方をしていないのもあって。
 
 
「しょうがないですの。自分の足で探しますわ」
 
「まぁ、空間転移テレポート能力者である白井さんなら、普通の人よりは早いでしょうね」
 
「それでも、人工衛星から見下ろすよりは遅いでしょうね」
 
 
 
 
 
 
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Author:junq
愉悦(´・ω・`)


好きな作家は、奈須きのこと西尾維新。
最近は成田良悟も。

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