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とある強化系の魔法使い そのご

さてはて、読者諸君なら知っているだろう。
この年度のハンター試験、一次試験はマラソンである。

疲労が限界に達し、バタバタと倒れていく男達を見ながら、シュウはやる気を失くしていた。


(心源流の走りこみの方が、何倍もきついんだけど……)


ちなみに、シュウの言うところの走りこみは、念能力者専用の練習メニューであることを、一言付け足しておく。
そんな訳で、汗の一滴も垂らさず、息を乱した様子もないシュウとアキナ。
そんな二人に、一人の男が近寄っていく。


「やあ。余裕そうだね」

「そういうあなたも、まるで息が乱れていませんね」

「……? シュウ、なんでそんなに喧嘩腰なの?」


道化師のような格好の男に、シュウは敵意さえ覗かせて返答する。
それを見て、アキナは首を傾げ、男は舌なめずりをする。


「僕は前回うっかりしてなかったら、合格してたしね。このぐらい余裕さ」

「……まあ、『使える』なら余裕でしょうね」

「なにが?」


『念』を知らないアキナが尋ねるが、その程度で教えてもらえる訳もなかった。
『知っている』彼らは、その話題を無視して再び話し始めた。


「今回は豊作だね。まだまだ刈り入れ時じゃないけど」

「前の方に居た彼らですか? 確かに凄かったですね」

「フフフ……君もだよ?」


話していく内に、シュウの表情がどんどんげんなりしていくのを見て、再びアキナが首を傾げる。
シュウがこんなに人を嫌うのは珍しいな、と。


「そろそろ僕は前に行くよ。じゃあね」

「ええ。さようなら」

「こういう時は、またね、だろう?」

「さようなら」

「つれないねぇ」


物足りなさそうな顔をしながら男が去っていく。
それと同時に、シュウの様子も普段と変わらないものになった。


「……どうしたのよ、シュウ。機嫌悪かったみたいだけど」

「あいつ、走りながら受験生全員を品定めしてた」


――まるで極上のメインディッシュが待ちきれない子供みたいな目で。






悠々と階段を登り切ったシュウとアキナだったが、再びシュウが顔を曇らせた。
アキナがシュウの見ている方向に視線を向けると、先ほどの道化師風の男がシュウに向かってウインクしていた。


(あの男……攻めというより、責めね)


そんなシュウが聞いたら脱兎のごとく逃げ出しそうな思考をしながら、アキナは辺りを見渡した。
ちなみに、試験官が既に説明を始め、階段に取り付けられたシャッターが下りて来ているが、それには目もくれない。
ふと、アキナが目をつけたのは、黒髪の少年と、銀髪の少年。
二人とも11~13歳程度だが、銀髪の少年と比べて、黒髪の少年の方が疲労しているようだ。


(銀髪の方が攻めで、黒髪が受けか……なんかあの銀髪は動物的な意味でネコっぽいけど)


やっぱりシュウが聞いたら耳を塞いで逃げ出しそうな思考をしているアキナは、一連の騒動を丸々見ていなかった。
というより、妄想の世界に入っていたので、聞こえなかった。


「アキナ、ほら行くよ」

「ん、どこに?」


とぼけたように――本当に分かっていないのだが――言うアキナを引っ張りながら、シュウは走る。
霧が漂う詐欺師の塒――ヌメーレ湿原の真っ只中を。






霧が漂う湿原を安全に潜り抜ける。
言葉にしてみればたったこれだけのことなのに、受験者はバタバタと倒れていく。
それもそのはず。この湿原に住む生物達は、騙すことで糧を得ている。
視界がほぼ無いと言っても過言ではない霧の中では、全く騙されないのは難しい。
ならば、霧が無ければ良いのだ、と考えたところで、その方法はどうするのか?
だが、ここにその方法を持った者が居た。


「これは……障壁を広げてるの?」

「ATフィールドとかは変形させてる描写があったでしょ? なら、障壁でも出来るかなって」


霧が円状に押し退けられた空間。その中心をシュウとアキナは手を繋いで走っていた。
範囲を広げた魔法障壁によって霧を弾き、敵対生物も寄せ付けない。
まさに二人だけイージーモード、といった様子である。
ちなみに、障壁の端の方でたまに受験者が圧殺されているが、シュウ=カタギリはどこ吹く風だ。


「霧が晴れてきたわね。もう良いんじゃない?」

「そうだね。そろそろ縮めるか」


既にほぼ視界に影響が無いほどに薄まっていた霧が、シュウとアキナの周囲に迫ってくる。
それに紛れるように後方から迫ってきたトランプに、シュウは無詠唱の魔法の射手を一矢。
放たれた風属性の矢は、トランプを包み込むように変形し、失速させる。
そうして、トランプは音も無く地面に落ちた。


「……今、何かした? シュウ」

「何もしてないよ?」


シュウ=カタギリはうろたえない。
例え、後ろで変態ピエロが舌なめずりしていようとも。






「終~了~」


大きな大きな銅鑼の音。それと共に、その広場に居たものに戦慄が走った。


((豚の丸焼き70頭……化け物かっ!?))

「う、うろたえないっ! ジャポン国民はうろたえないっ!」

「落ち着け、シュトロハイム!」


思わずジョジョ改変ネタを口走ったシュウに合わせるように、アキナが叫ぶ。実に良いコンビである。
ちなみに、周りの人間は、何を言ってるんだこのガキ程度の認識である(ジャポン出身を除く)


「次の課題は……寿司よ!」


シュウとアキナ。ついでにハンゾー他ジャポン出身の人間の顔は、その瞬間『バァ~ン!』といった感じであった。
何を言っているのか、さっぱり分からないとは思うが、そう表す他ねえんだよ!


「ふふふ。こんなこともあろうかとっ!」

「な、まさか卵を持ち込んでいるなんてっ! しかも、ここまでの道中で、ヒビ一つ入っていない!」


アキナが決め台詞と共にポケットから卵を取り出し、シュウが料理アニメ風の語調で褒める。
ちなみに、褒めている内容はシュウ含めた少数の実力者の本心である。
シュウのおかげとはいえ、凄いなっ! 生卵をポケットに入れていたのも驚きだけどっ!






「ノリを巻いてない。不合格」

「そんなの好みでしょっ!?」


流石に海苔までは持っていなかった二人は海苔を巻かないタイプの卵焼きの握りを提出し、不合格となった。
うっかり忍者が内容ばらしたとはいえ、ひど過ぎねー?


「私が不合格だと言えば不合格なのよ。分かる?」

「うちの近所の寿司屋は巻かないのよっ!」

「知るかあっ!」


女三人寄れば姦しい、と言うが、二人で十分やかましかった。
もちろん男は揃いも揃って別の方向を向いていた。
みんな、巻き込まれたくないのだ。


「シュウ! アンタはどっちが好き?」

「む、そういえば、貴方もジャポン出身だったわね。どっちなの!?」


だからこそ、二人に絡まれた少年に周りは一斉に思うのだった。
『がんばれ!』と。


「そういえば卵焼きと言えば甘い卵焼きと出汁巻卵がありますが何故か寿司屋の卵焼きは甘いものが多い気がし
ますそれはどういうことかと言うとまず第一にシャリとの味のバランスが重要だからでしょうシャリとネタ合わ
せて寿司である以上バランスを欠いては下品な寿司になってしまうそれ故に酢飯に合った出汁の卵焼きというの
は難しいのではないかというのが僕の考察なのですが、メンチさんはどう思いますか?」

「え、と、早口過ぎて細かいことは聞き取れなかったんだけど……アンタが寿司に対して情熱を持っているのは分かったわ!」


食べ物についての意見を求められたのに答えられなかったのが悔しいのか、多少顔を歪めてメンチは答えた。
その後ろで、ブハラが冷や汗を書きながら、メンチの顔を覗き込む。

「その、メンチ。試験の続きを……」

「え、見るだけで分かるわよ。あれは採点に値しない」


メンチの視線の先には、おにぎりに魚を刺したものや、腹を開きご飯を詰めたものなどがある。
ブハラはメンチの言葉に閉口しながらも思考する。

――あのご飯詰めた奴、ショーユかけたら美味しそう

結局のところ、彼も美食ハンター。
美味しいものが好きだというのは変わらなかった。


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junq

Author:junq
愉悦(´・ω・`)


好きな作家は、奈須きのこと西尾維新。
最近は成田良悟も。

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