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とある噂の取捨選択 そのさん

 
今日もゆらりゆらりと、彼は町を歩いている。
特に何か目的がある訳ではなく、ただ暇つぶしに。
 
 

 
「ちょっと! そこのアンタ!」
 
 
だから、そんな声が聞こえても彼は気にしない。
ゆらりゆらりと歩いて、
 
 
「ちょっと! 待ち……」
 
 
肩の辺りで空気が動いたのを感じ、彼は振り向いた。
そこには、常盤台の生徒らしき少女がいた。
茶髪のショートヘア。超能力者レベル5の中では、一番顔が有名なその少女。
 
 
「ふむ。超電磁砲レールガンか。珍しい」
 
「そういうアンタは、接触不能ゴースト……いや、取捨選択セレクティブね」
 
 
超電磁砲レールガン――御坂美琴は、彼から目を離さないまま、片手で携帯を操作した。
その様子を見た取捨選択は、ゆったりとした手つきでポケットに手を突っ込んだ。
――その瞬間、辺りの電磁波が全て、目茶苦茶にかき乱された。
 
 
「これは、ジャミング!? アンタ、ポケットの中の物を――」
 
「風紀委員と同室らしいな、超電磁砲。連絡は邪魔させてもらう」
 
 
ギリ、と御坂美琴の歯が音を立てた。
ジャミングを能力によって解除しようとして、即座に失敗に終わったからだ。
携帯電話の周波数帯をピンポイントで押さえたジャミング波。
能力によって、その逆位相の波をぶつければ、解除出来る。
ただし、理論上は・・・・だ。
 
取捨選択の変態染みたプログラミングによって、その装置は常にパターンを変える。
0.1秒前と逆の波をぶつけようとしても、既に波の形は変わっているのだ。
それこそ、機械でもこれを無効化するのは難しい。
 
 
「それでは、私はこれで失礼させていただこう。特に予定は無いが」
 
「ちょっと待ちなさいよ!」
 
 
当然のごとく、取捨選択は待ちはしない。
だが、ふと何かに気付いた様子で正面を向き、次の瞬間には体を宙に舞わせていた。
その次の瞬間、彼が一瞬前まで居た空間に、雷撃の槍が突き刺さった。
彼が難なく元の位置に着地したするのを見ながら、御坂美琴は笑っていた。
 
 
「避けたわね?」
 
「…………」
 
 
取捨選択は答えない。
ただ観察するかのように、御坂美琴を見ているだけ。
 
 
「アンタが電流も透過できるなら、今の攻撃は避ける必要は無かった。
でも、アンタは避けた。それは何故か。
電流が流れる時、それとは逆の方向に電子が流れることくらい、学園都市の学生なら知ってるわよね。
つまり、アンタは自分の体から電子が流れ出ることを防げないのね?」
 
「……ふむ。そうだとしたら?」
 
「私はアンタを倒せる。相性はバツグンじゃない。ちょっと風紀委員の本部まで来てもらうわよ!」
 
「ふむ。何を勘違いしているのか知らないが……超電磁砲。
お前が私と相性が良い訳ではない。単に、お前の能力は私に対して相性が悪くないだけだ」
 
 
別に、何のことはない。
彼と能力におんぶでだっこなそこらの能力者を一緒にしてもらっては困る。
彼は超能力者レベル5の中では、一番体を鍛えているのだ。
 
 
 
 
雷撃の槍の連射。
それをかいくぐるように、取捨選択は身を屈め、超電磁砲に突進した。
今もほんの数cm横を槍が通り過ぎていくが、彼は目線さえ向けない。
ただひたすら、前に。
 
 
「ちっ、当たったら大怪我するわよっ!」
 
超能力者レベル5の攻撃で、その程度で済めば御の字だろう」
 
 
ついに、超電磁砲が槍の照準を目一杯下げた。
避けるには、跳ぶしかないという状況で、取捨選択は空中を踏みしめた・・・・・
 
 
「はぁっ!? 空気でも踏みつけてんの!?」
 
「空気なら、無能力者でも毎日踏んでいる。靴の裏から逃げていくだろうがな」
 
 
そして、とうとう彼は跳び、着地した。
空中に、しかも逆さまに。
再び跳躍。超電磁砲目掛けて真っ逆さまに、彼は落ちていく。
 
 
「当たりにくるとはね!」
 
 
油断していたとしか言えないだろう。
超電磁砲が、人が一人気絶するには十分な――いつもと比べれば貧弱すぎる――電撃を放った時には、彼は空中を再度跳躍した。
今度は横に。
 
 
「な、あっしまった!?」
 
 
空中では体勢は変えられない。移動なんてもってのほか。
一瞬前には空中を踏みつけるような非常識を見ながらも、そんな常識が超電磁砲の頭からは離れなかった。
超電磁砲の視界の端には、もう一度の跳躍の姿勢を見せた取捨選択が映っている。
 
 
(まずい! 接近を許すのはまずい!)
 
 
触れるものを選ぶことが出来るということは、臓器を直接殴ることも出来るということではないか?
臓器は鍛えられない。一発受けたらまず間違いなく終わり。
 
 
「あ、あああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
 
 
超電磁砲の選択。
それは無差別に電流を周囲にばら撒くこと。
これならば、下手に近寄ることは出来ないはず――だったのだ。
 
バチバチと鳴る電気の糸を、取捨選択が押し退けていなければ。
 
 
(そうか。私はアイツの能力を最後まで誤解していたのか)
 
 
目の前に手が迫ってきて、最後に御坂の頭にあったのは、謎が解けた爽快感だった。
 
 
 
 
 
 
後始末を終え、取捨選択は心底面倒くさそうに顔を持ち上げた。
大量の野次馬が、遠巻きに彼と少女を現在進行形で見つめている。
 
 
「ふむ。どうやら目立ちすぎたか」
 
 
取捨選択は、ぼやきながらも歩き出した。
まるでモーゼのように野次馬を退けながらも、それを彼が気にすることはない。
 
 
「そこのあなた、お待ちなさい! 風紀委員ジャッジメントですの!」
 
 
刹那の間に、その場にもう一人の少女が現れていた。
誰かが、空間移動能力者テレポーターだ、と呟く。
茶髪をツインテールに纏めているその少女。
風紀委員ジャッジメントの白井黒子だ。
 
だが、彼はその声を聞いていなかったかのように、歩みを止めない。
後ろを一顧だにしないその姿に、白井黒子が青筋を立てる。
彼女は、スカートの中、太股に巻いてある革のベルトから、金属矢を発射した。
 
空間移動テレポート。白井黒子のそれは、触れてさえいれば三次元的な空間を無視して、物体を離れた場所に飛ばすことが出来る。
その能力を使用すれば、空間移動した物体は移動先の空間に割り込む・・・・ように出現する為、単純な防御は不可能となる。
だがしかし、取捨選択をそれで倒せるか? と問いかけられれば、白井黒子は答えることが出来ない。
 
故に、金属矢は彼の靴を縫い止めた。
周りから、ヒッ、と短い悲鳴が上がった。
どう見ても、その金属矢は彼の足を貫通していたからだ。
 
 
「話を少し聞かないだけで武力行使……ふむ。なるほど。それが風紀委員のやり方か?」
 
「あなたには、暴行の容疑がかかっています。被害者も記憶が曖昧ですから、あなた自身が証言していただけると助かります」
 
 
ふむ、と取捨選択は考える。
傷害ではなく暴行、ということは、女性に対するそういう行為か。
ならば、自身は潔白だ、と結論を出したところで、それを目の前の少女に納得させるのにどれだけの時間がかかるのかといえば……
加害者の言い分を100%聞くような組織は、治安維持なんて出来ないだろう。
よって、まず間違いなく時間単位で拘束される。
 
 
「そちらの言い分を聞いて、私が素直に従うと?」
 
「聞かないでしょうね。容疑と言っても被害者からの届出もありませんし、どちらかと言えばあなたは守った方なのでしょう?」
 
「……ふむ。結論がそちらで出ているのなら、私は行かせてもらおう」
 
 
彼はおもむろに靴に刺さった金属矢を掴み、引っこ抜いた。
当然のように、金属矢には血の跡は無く、靴から覗く肌の色も赤に染まった様子は無い。
 
ゆらりゆらりと、彼はその場を後にする。
目指すはただ一店。靴屋だ。
 
 
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junq

Author:junq
愉悦(´・ω・`)


好きな作家は、奈須きのこと西尾維新。
最近は成田良悟も。

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