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とある噂の取捨選択 そのよん


その日は、取捨選択にとって非常に珍しい日だった。
自身にちょっかいを出そうとする人間を、粗方掃除してしまったのである。
恐らく軽く調べている段階の人間は居るだろうが、そんなものは無視してしまってよい。
つまり、その日は取捨選択にとっての休日だった。


家でだらりだらりと怠けていた取捨選択だったが、そこにきたのが雀の一言。
『うっとうしいのですよ、と』
丸っきり休日のお父さんとお母さんの構図だった為か、取捨選択は逆らえないままに外出を決めた。
といっても、彼に何かすることがある訳でもなく、いつも通りに彼はゆらりゆらりと歩いていく。

歩き歩いてお昼時。
取捨選択は目についたレストランに入った。
注文するのはハヤシライス。どうやら、彼の好物らしい。
ハヤシライスが運ばれてくるまでの暇な時間に、ふと彼は外を見た。
路地の奥で数人の男が、一人の少女を囲んでいる。
どう見ても自業自得だ。死ななければ御の字だろう、と彼はあっさり男達を見捨てる。
その代わりに、ウェイトレスが運んできたハヤシライスに手をつけた。
ほんの少し離れた席で、見たことのある男が店員に呼びとめられながらも、外に走っていくが、それは彼の知ったことではない。
もちろん、その男が彼の見捨てた男達を助けにいったとしても。

そう、ほんの数秒後にその路地から稲光が飛び出して来ようが、彼の知ったことではないのだ。


彼は非常に暇だった。
やることが無いから、いくつもの学区を跨いで歩き続けた。
ゆらりゆらりといつもの通り、平常運行。
しかし、それでもやはりやることは無い。
空は既に青から黒に塗り替えられ、明かりが灯されていようとも。
さてそろそろ家に帰ろうか、と彼が考え出した時のことだった。


「あれ、そこに居るのは超第三位じゃありませんか。超奇遇ですね」


不意に彼の横合いから、声がかかる。
彼は首だけでそちらを見て、溜め息を吐いた。


「全く以って運が無い。……ふむ。私の休日もこれで終わりか」

「結局、アンタの失礼は直らないって訳?」


アイテム四人娘のうち、二人がそこに居た。
二人共かよわい女の子に見えるが、侮るなかれ。彼女達は学園都市の暗部なのだから。
……といっても、今は二人とも買い物袋を持っている為に、買出しに行って来た女子学生にしか見えないが。


「ふむ。言い過ぎとも思えんがな」

「そんな調子だから、超友達居ないんですよ」


先ほどから『超』と繰り返す少女、絹旗はくすくすと笑った。
反面、その絹旗に連れ添うようにしている金髪の少女、フレンダは呆れ顔だ。


「ホント、麦野が居なくて良かったって訳よ……」

「毎回超突っかかりますからね。宥める側としては、超迷惑です」

「ふむ。ならば、好きなだけやらせておけば良いだろう。どうせ効かないのだからな」

(それが更なる暴走を呼ぶことは超考えてないんでしょうね……はぁ)


絹旗とフレンダが二人揃って溜め息を吐き、取捨選択は首を傾げた。
そもそも、取捨選択に効かないとはいえ周りには被害が及ぶのだから、二人は止めざるをえない。
上司からの小言はもう十分だと、フレンダも絹旗も内心はうんざりといった気分だ。

ちらりと絹旗が腕に目をやり、驚愕する。
フレンダも釣られるように絹旗の腕に目をやり、その表情がピシリと固まる。


「げ、もうこんな時間って訳よ」

「これ以上遅くなると、麦野が超キレるかもしれません。さよならですね、第三位」

「ふむ。生きていたら、また会おう」


超縁起でもないです、と呟いて絹旗は歩き出した。
フレンダも呆れ顔のまま、絹旗の後に続く。

彼も二人の後ろ姿をぼんやりと眺めていたが、ふと、何かに気付いたように振り向いた。
その彼の体をすり抜けて、彼の背後に白い羽が突き刺さる。


「ちっ、不意打っても駄目か。三位ってのが信じられねえぜ」

「ふむ。今日は厄日か。早く帰りたいものだが」

「ちょっと運動に付き合うぐらい、いいんじゃねぇか?」


そこに居たのは、ホスト風の男。
超能力者第二位、垣根提督。


「私にとっては、運動にすらならん」

「……はっ、戦う気ねぇのに、挑発してんじゃねぇよ」


イラついたような口調とは裏腹に、垣根提督は冷静だった。
何をやっても命中すらしない相手に、モチベーションを保ち続けるのは難しい。
垣根提督も、分かってはいるのだ。取捨選択には勝つことは出来ないと。
仮に、負けないことは出来たとしても。


「今日はどうした? この時間におまえを見つけたのは、初めてだぜ」

「言うは易しだが……ふむ。言い方は一つしかないか。『雀に追い出された』」

「……おまえ、割とあのメイドに弱いよな」

「ふむ。言われてみれば」


ぼんやりとして、隙だらけの取捨選択。
しかし、垣根提督がその隙を狙うようなことは無い。
もちろん、その隙を狙った者から守ることも無い。

ガァン! と地面のコンクリートが弾け跳んだ。
弾痕やその他諸々の要素を加味して、取捨選択は射手の居場所を導き出す。


「ふむ。見落とし……というより、チェック漏れがあったか」


そこは一キロ近く離れたビルの屋上。
全力疾走で駆け抜けたとしても、普通なら二分以上は確実にかかる。
それも、直線の最短距離を行った場合だ。道が入り組んだりしていれば、更にかかるだろう。
だが、それがどうした。
ここに居るのは、条理を覆す超能力者。その最高峰。
ならば、大抵のことは道理を捻じ曲げ、解決せしめるだろう。


「そうだ、こんな言葉があったな」


ギリギリと、取捨選択の右拳が腰に構えられた。それはさながら、弓に番えられる矢のように。
そして、取捨選択は跳び上がる。空中を蹴り、一直線に射手の元へ。
射手は泡を食ったように逃げ出す準備を始めているが、慌てているせいか銃を仕舞うのが遅い。
もちろん、そんな隙を取捨選択が見逃す訳も無い。
しかし、見逃そうと見逃さまいと、彼我の距離は未だに八百メートル以上。
普通ならば、到底拳が届く距離ではなかった。


「ふむ。覚悟が無い半端者か。『撃って良いのは、撃たれる覚悟がある奴だけだ』」


その瞬間、取捨選択は真っ直ぐに腕を突き出した。
その腕は中空で消え――同じように、射手の二十センチ手前の中空から飛び出した。
拳は正確無比に射手を捕らえ、気絶させる。それを確認して、彼はようやく一息ついた。
といっても、彼は足を止めない。
一応自分から情報を流しているとはいえ、自身の能力の核心を知る者は少ないのだから。
わざわざその人数を増やすことはない。きっちりと、後始末はしなければ。


「……ふむ。そういえば、第二位は見えていたのかな?」


ぐりんと首だけを回して、取捨選択は後ろを見やる。
だがそこに第二位、垣根提督の姿は無く。


「……見られていたか。ふむ。面倒なことになりそうだ」


かといって、彼が慌てることは無い。
能力の全貌を知ろうが知らまいが、彼に垣根提督が勝つ確立はほぼゼロ。
取捨選択にとって、垣根提督とは無駄にプライドが高いだけの人間なのだから。
だから、第二位が何かをした程度で、慌てることは有り得ない。






「おかえりなさいまし、と」


帰ってきた取捨選択を前にしても、雀は冷静だった。
たとえ、服が血で汚れていたとしても。


「携帯を忘れていたせいで、後片付けに余計な手間がかかった……」

「はいはい。どうでもいいので、その服をさっさと洗濯機に入れて下さい、と」


血の理由を説明しだした取捨選択に対して、雀の対応は随分と淡白だ。
なんていうか、ドブに落ちた亭主の面倒を毎回見ている妻のような。


「そういえば、SGEから製作依頼が来ていましたよ」

「ふむ。後で見ておこう。それより先に、夕飯を……」

「冷凍のシュウマイがありますから、チンするのを待って下さいね、と」

「ふむ。ちなみに製造場所は?」


その問いに、雀は満面の笑顔で答えた。


「チャイナですよ、と!」

「ふむ。なら廃棄して、他の物を作らねばな」


取捨選択はあくまで冷静に、シュウマイを袋ごとゴミ箱にボッシュートしようとして、止めた。
胡乱な目付きで裏側を眺め、雀の顔に投げつける。
ここに、雇用主と被雇用者の熾烈な戦いが始まったのだった……

ちなみに、正しい製造場所は日本(学園都市)だった。
どうやら、彼女なりのジョークだったらしい。
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junq

Author:junq
愉悦(´・ω・`)


好きな作家は、奈須きのこと西尾維新。
最近は成田良悟も。

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