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とある噂の取捨選択 そのご

「なぁ、アンタ転生者だろ?」


胡乱な目つきで、取捨選択はその男を見た。
短く切られた金髪には染めた後はなく、地毛のようだ。
端整な顔はまるで、造形物のよう。
そして、その口から出る言葉も今までのものと大して変わらない。
転生者。まるで中学生の妄想のようなことを、

「ふむ。全く患者は増え続けるばかり……困ったものだ」

「ちょっとアンタ。俺の話聞いてる?」

「こちらを見て喋らないで欲しいものだな。病気が移る」

「患者って俺ぇ!?」


れっきとした病気だろう。中二病という。
全く、自覚に欠けた患者はこれだから。
彼は手の施しようが無いとばかり、力無く首を振った。


「いや、むしろアンタは中二小説の中に居るというか……言っても無駄か?」

「ふむ。自分が神の造形物か何かだと勘違いしているのか?
安心しろ。それはその年代なら良くある勘違いだから」

「哀れみが! 親切が痛い!?」


大仰なリアクションを取りながら、男は走り去っていった。
じい、と男が走り去った後も、取捨選択は何かを考え続け、ある結論に至った。


「そういえば、二次創作の類でこういう展開を見たことがあるな……
ふむ。感情移入するのはいいが、のめり込み過ぎるのは良くないな」


きっぱりと、彼を感情移入し過ぎる思春期と決め付け、彼は踵を返した。
まぁ、彼は一次創作する側であるのだし、割と中毒性のあるゲームを作ることでも有名である。
当然、二次創作の類もある程度作られるし、彼もそれに目を通している。
かといって、創作に影響が出るかと言えば、そんなことは無い。
そもそも、一次創作と二次創作は、見ている方向が違うのであるし。
……ちなみに、読んでいる内に、能力の応用を思いついたりするのは秘密である。


「ふむ。患者といえば、超能力者レベル5にも一人居たか」


彼はあまり得意ではない、痛々しい女の顔を思い出そうとして――


「お主、第三位か」

「……ああ、そうだが」


聞こえた声に、未だ嘗て無いほどに、表情を曇らせた。
言葉にするならば、げんなり、というのが一番当てはまるだろう。
振り返りたくないが、振り返らないとまずいとでも言いたげに、彼はゆっくりゆっくりと振り返った。
その先には、銀髪(頭頂部は黒)にオッドアイ(カラーコンタクト)をした女。
彼女こそが第五位。天地無用グラビテ秦永しんえいである。こんな名前だが純正の日本人。
今日の彼女は白いゴスロリ。それに黒いフリルが付いたもの。……普通逆じゃね?


「何か用か」

「先程、わらわに不躾に話しかけてくるものがおってな。何やら転生とやらと言っておった」

「……ああ」


尊大に話す第五位に対して、彼は凄く面倒臭そうな顔で適当な対応をしている。
しかし、その様子の彼にたいして文句を付けること無く、秦永は話を続ける。
……実は、うっとうしがられているのに気がついていないのかもしれない。


「お主、何か知らぬか」

「……知らん」


一言。一言である。これだけで、彼がどれだけ対応を面倒臭そうだと思っているのかが分かるというもの。
だが、秦永がそれを気にすることは無い。これで気付いていないとしたら、相当だが。


「然様か。お主ならもしや、とも思ったが。ではな」


返答を待たずして、秦永は取捨選択に背中を向けた。
かと思いきや、取捨選択は地面を蹴り、一歩後退。
そして次の瞬間、彼が直前まで居た地面が陥没した。


「む? ああ、済まぬ。少し飛ばしてしまった」

「……これで少しか。馬鹿力が」


余り気のこもっていない謝罪に、流石の彼も怒気が漏れた。
怒気を向けられた第五位と言えば、余り大事とは思っていないようで、カラカラと笑う。


「そう怒るな。どうせ避けるのであろう」

「全て見えているからな」

「ほう。ならばお主。勝ち目があるかどうかくらいは分かろう?」


自信満々といった様子の第五位に、第三位たる彼は答えなかった。
ただ、ほんの一歩踏み出すだけ。
たったそれだけの動作で、彼は第五位の目の前に移動していた。


「ぬっ!? 瞬間移動テレポート……」

「ふむ。お前に私は見切れていないようで安心したよ」

「っ! 小癪な!」


第五位は黒いフリルから覗く、その白い手を一閃。
それと同時に、周囲のコンクリートが爆撃でも受けたかのように陥没していく。
だが既に、取捨選択の姿はそこには無い。


「どこに行きおった?」

「後ろだが?」


すぐ後ろから聞こえた声に、第五位は即座に反撃――すること無く、顔を赤らませた。
その原因は恐らく、取捨選択が彼女の耳に息が吹きかかるほどの距離に……というか吹きかかってた。


「ち、近いわ! たわけがぁ!」

「ふむ、まずそうだな」


落ち着きを失った第五位とは対称的に、取捨選択は冷静だった。
平静を失った第五位秦永は、現在能力を制御出来ていない。
彼女の体からは、連続的に粒子が飛び出してきていた。


「重力子の増加――抑えなければまずい、か」


未だにほぼ密着状態のせいか、第五位が落ち着きを取り戻す様子は無い。
そして、辺りのコンクリートがミシミシと軋みを上げ始める。
その範囲は第五位を中心として、20メートル前後。
取捨選択と言えど、触れること無く影響を及ぼす重力の鎖から逃れることは出来ない。
このままなら、彼は身動きすら取れなくなり、最終的には押しつぶされるのだが……


「……ふむ。この程度まで抑えれば、アレイスターも文句は無いだろう」

「な、まさかお主、アレイスターと」

「少し黙っていろ」


彼はそう言うと、秦永の目を押さえ、視界を遮る。『はわっ!』なんて声は聞こえてない。聞こえない。
そして、そのままダンスでも踊るように体を一回転。それだけで、彼と彼女の姿は消えた。






「お帰りなさ……む、変な臭いがしますよ、と」

「む、どんな臭いだ?」

「獣臭いです。ネコを何匹も被った泥棒猫に違いありません、と」

「……ネコ?」


玄関で取捨選択を迎えた雀が見せた感情は、普段より激しいものだった。
雇用主の取捨選択としては、何故雀がそんな感情を見せるのか分からない。
被雇用者の雀としては、ちょっとばかり怒り心頭だった。
一番は何やら、彼の体から発情したメスの臭いがすること。
二番目は、心の機敏にいささか鈍い取捨選択に対して。


(何年も一緒に過ごしていて、情が湧かない訳がないでしょう、と)

「ふむ。猫と触れ合った覚えは無いが……先に風呂に入ってこよう。夕飯は?」

「カレーにしようと思っていたのですけど、マーボーカレーにします、と」

「……ふむ。どうやら私の耳はイカれたようだ」

「いいえ、きっとイカれてはいません、と」


不可解だ、と顔に書いてある取捨選択を置いて、雀はリビングへと戻っていく。
かと思えば、リビングに入る一歩前でピタリと止まり、振り向いた。


「お風呂を沸かすのを忘れていましたので、シャワーでお願いします、と」

「ふむ。ならば、夕飯を先に……」

「シャワーでお願いします、と」

「……ふむ。了解した」


笑顔の威圧によって、雇用主は被雇用者に負けることとなった。
この力関係は、きっとこの先も変わらないのだろう。


ちなみに、マーボーカレーは割と美味しかったようだ。解せぬ。





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まとめ【とある噂の取捨選択 】

「なぁ、アンタ転生者だろ?」胡乱な目つきで、取捨選択はその男を見た。短く切られた金髪には染めた後は

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junq

Author:junq
愉悦(´・ω・`)


好きな作家は、奈須きのこと西尾維新。
最近は成田良悟も。

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