スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

とある噂の取捨選択 そのなな


びゅうびゅうと風が吹く。
夏休みも終わろうかという、八月二十五日。
第七位。暴風空域ハリケーンの倉内飛鳥。
彼は一つの目的を持って、あるビルの屋上に立っていた。
「さて……六位はどこかな?」


彼の思考は単純明快。
我が神の教えを広めよう。要するに布教である。
だが、それには彼に対する周囲の目がネックとなる。
この科学の街で宗教を熱心に信仰するのは変わり者であるが
彼はそれに加えて、信仰しているのは邪神じみたモノである。
故に、彼は何を言っても他人に相手にされない。
ありていに言えば、無視されているのである。
ならば、まずは注目を集めよう。目を自分に向けなければならない。


「ん……見つけた」


彼は端的に言って、空力使いの頂点である。
故に、風を介して学園都市中から必要な情報を拾ってくることくらいは朝飯前。
第六位の居場所を、会話を盗み聞きすることによって知った彼は、能力を本格的に使い始めた。
彼の体を風が覆う。風が辺りを切り刻む。風が物を吹き飛ばす。
彼にとってはただの余波。能力から生じた無駄なものでしかないが、それでも周りに大きな影響が出る。
これこそが超能力者レベル5。これこそが学園都市の頂点。
彼はビルの上から、飛び立った。それも、ただの余波のみで。


「いあいあはすたぁぁぁぁ!」


彼は一直線に飛んでいく。
目指すは第六位。原子崩し。


「むぎの。南南西から何かくる」

「仕事中に電波は止めて……ホントだって訳!?」


彼の耳はそんな驚いた声を拾ったが、彼は反応しない。
原子崩しを仕留めることだけが、今の彼の目的なのだから。


「あいあいはすたー!」


空気を能力で押しのけて、全く空気が無い空間を第七位が駆けた。
第六位、麦野沈利目掛けて一直線に、風の槍を突き出した。


「バカが!」


当然、彼女も応戦する。
原子崩しを板状に展開して、風の切っ先を消し飛ばす。
そして、即座に原子崩しを射出。
曖昧にして決定的な死の光線が、第七位目掛けて飛んでいく。
だが、その程度で慌てるようでは超能力者などと呼ばれていない。
身に纏う風で空気をかき分け、常人には不可能な空中での駆動を可能とする――!


「あいあいはすたぁぁぁあああ!」

「うるせぇんだよ!」


即座に六位の後ろに回り込んだ七位が、風の弾丸を六位に見舞う。
六位は当然、原子崩しで防御。
全弾を防御し切り、無傷の六位であるが、その心境は悪い。
何故なら、七位の全力とはこの程度ではないからだ。


「いあいあはすたー! はすたーくふあやくぶるぐとむ!」


六位の周りを縦横無尽に飛び回る七位が、ついにその力を見せようとしていた。
風が七位に向かって収束し、その位置は容易に六位にも知れたがただそれだけ。
場所が分かったとしても、攻撃が通らなければ意味がない。
今、第七位は極小の台風と化している。
半端な攻撃は全て、吹き散らされる。


「ぶぐとらぐるんぶるぐとむ!」

「日本語喋れやぁあああああ!」


第七位と原子崩しが、真っ向から衝突した。
絶大な威力を持つ原子崩しは、風を容易に散らしていく。
だが、対する七位が擁する風は生半可な出力ではない。
故に、七位が纏っていた風はほんのゼロコンマ五秒ほど原子崩しに耐えることが出来た。
それだけの時間があれば、七位は十分六位に接近することが出来――


「あいあいはすたああああ!」


勝利の咆哮を上げながら飛び去る第七位。
その後ろでは、X字に切り裂かれた第六位が地面に倒れていた。


「あははははは! この程度かよ。もっと早くやれば良かった」


適当なビルの屋上に降り立ち、高笑いを上げる第七位。
確かに、軍と戦えると称されるほどの出力を持つ超能力者にとっては
能力の希少性など何の意味も持たない。
あるのは精々、相性。
事実として、第二位がどんなに全力を振り絞ったとしても、第三位に攻撃は当たらない。
彼の直接的攻撃は全てすり抜けられ、すり抜けることが出来ない攻撃をしてもかわされる。
対して、第三位の攻撃は全て、第二位には素通りだ。
彼は防御をすり抜ける。流石に第一位にはベクトルを返されるが。


「さて、次は第五位を……」

「その必要は無いわ」


誰も居なかった屋上に、一人の少女が上がってくる。
凄まじい強度の磁場を踏みしめて、第四位が空中を歩いてくる。


「第四位の私なら、アンタの要望には応えられると思うけど」

「く、はっ。くははははは」


突然笑い出した第七位の様子を訝しむ第四位。
その瞬間。爆発するように……否、逆だ。
第七位の体に巻き付くように、風が収束していく。


「手間が省けたぜ。……バカがぁああああああああ!」


一瞬で第四位に肉薄した第七位は、その腕を振りかぶろうとして――


「……な?」


固いコンクリートの床に、横になっていた。
訳も分からずもがく第七位。
何かがおかしい。足を動かそうとしているのに、手が動いている。
これはどういう状況なのだろうか考えが纏まらない。
七位の頭の中はぐちゃぐちゃで、まともな思考が出来なくなっている。


「流石に、他人の体内電気を操るのは手間取るのよね」


四位が七位を見下ろしながらそう言うが、七位はその意味が分からない。
本来、言語野へと行くべき電気信号が別の場所に流れている。
ただそれだけで、今の七位は言語を認識することが出来なくなっている。


「わざわざ近づいてきてくれたから楽だったわ。この勝負は、私の勝ちよ」


そう高らかに宣言して、四位は制服を翻す。
ビルの屋上に残されたのは、電気信号が未だにぐちゃぐちゃな七位のみ。

ほんの三分。七位が平常の状態に至るまで、ビルの屋上でもがいていた時間だ。
何故、自分は負けたのだろうか? 七位はひたすら考えるが、答えは出ない。


「強く、なりたいな……」

「――そうか。力が欲しいか」


その瞬間、七位はその声から全力で遠ざかった。
七位の周囲を捉える風のレーダー。
声が聞こえるまでは、何も無かったはずだと、レーダーは言っていた。
だが、気づけばそこに一人の男が立っていた。
風に白衣をなびかせて、冷徹な目で七位を見つめている。


「お前……何者だ」

「名前など記号に過ぎない……木原、とだけ名乗ろう」

「木原、ね」


第七位も知っている。狂気の科学者集団、という話だったはずだ。
その名を知っているのならば、普通の学生がそれに頷くことは無いだろう。
だが、しかし。超能力者はただの学生だろうか? そもそも、普通の人間か?


「ああ。欲しいな。俺は我が神を証明する為に力が欲しい」

「理由などなんでも良い。力が欲しいならついてこい」


白衣を翻した男の姿を見ながら、小さく七位は笑った。
それは狂った笑み。
正気など知らぬと、狂気に浸り続ける男の笑みだった。







どうしてこうなったのだろうか。
第三位は半ば諦めの境地に達しながらも、考えた。
第七位と第六位、第四位の戦闘があったのは知っている。
その後の第七位の動向も掴んでいる故に、第三位は慌てない。
慌てず騒がず、ファミレスでハヤシライスを食べていた……
それだけなのに、どうしてこのような事態になっているのだろうか。


「今日も超能力者同士の戦いの痕跡が見つかりましたわ。
あなたから一言、言って貰えませんこと?」


何故、白井黒子がここに居るのだろうか?
第三位の疑問とは、端的に言ってそれだけである。
彼は安らかにハヤシライスを食べていたい。
それを邪魔するもの。白井黒子。


「言ったところで、話を聞くような奴は居ない。
超能力者とは即ち、自己の意識で塗りつぶした世界を以て
軍勢さえ相手にすることが出来る者達なのだからな」

「確かに、能力の強度が高いほど自意識が強いという説はありますが……」


言いよどんだ黒子に、取捨選択は手で払いのけるような仕草をした。
即ち、どっか行けよてめえ、ということである。


「私が思い浮かべる、超能力者を抑えることが出来る人物と言えばあなたなのですが……
仕方ありませんわね。地道に私が出来ることを積み重ねていきますわ」


フッと一瞬で、黒子の姿はその場から消えた。
それを確認しながら、取捨選択はもう一度、ハヤシライスをオーダーした。
またかよ、と顔に書いてある店員が店の奥に引っ込むのとほぼ同時。
取捨選択は白井黒子が移動した方向に向けて呟いた。


「この件が解決しないと、こういうことが何度もあると言うならば……
ふむ。少し働くのも良いやも知れん」
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

Profile

junq

Author:junq
愉悦(´・ω・`)


好きな作家は、奈須きのこと西尾維新。
最近は成田良悟も。

カテゴリ
最新記事
FC2カウンター
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

DLsite同人ランキング
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。